エアブラシの話
このたび、トリガータイプのハンドピースを買いました。以前から興味があったものの、なかなか手が出ませんでした。「手の癖を直せばいいや」と思っていたからです。手の癖については後述するとして、ハンドピースの種類について比較してみましょう。
形式 |
エアーを出す方法 |
塗料を出す方法 |
構造の複雑さ |
価格 |
操作難易度 |
シングルアクション |
ボタンを押す |
後部ダイヤルでニードルを後退させる |
簡単 |
安い |
難しい |
ダブルアクション |
ボタンを押す |
ボタンを引く |
やや複雑 |
普通 |
やや簡単 |
トリガーアクション |
引き金を少し引く |
引き金を更に引く |
複雑 |
やや高い |
簡単 |
僕が中学のとき「ガンプラ(ガンダムプラモデル。1980年代初頭)」ブームがあり、模型雑誌ホビージャパンを知り、エアブラシを知ります。初めて使ったハンドピースは吸い上げ式のタカラ「ミクロタッチ」でした。これは空気密度と毛細管現象を利用した単純な吹きつけ方式で、単色塗装はいいのですが、グラデーション塗装は不可能(に近い)でした。そのころホビージャパンで推奨していたハンドピースは価格の安いシングルアクションタイプ「オリンポスのPC-88(通称ヤング88)」でした。構造が簡単であることも推奨要因だったと思います。周りにすでに模型好きの集まりがあり、そのうち2名がヤング88を持っていました。彼らの作品が見事だったことも手伝って僕はますますエアブラシ上達のためには本格ハンドピース、の考えに傾倒していくのです。しかし貧乏中学生の僕に本格は手に届かないものでした。
本格ハンドピースを買ったのは高校1年のときです。コンプレッサー「アドコン4004」と共に。がんばりました。(笑)選んだハンドピースはダブルアクションタイプ「オリンポスHP-101」。ダブルアクションを選んだ理由は、尊敬する小田雅弘氏がダブルアクションを愛用していたからです。1mm以下の細い線から太吹きまで無段階の滑らかさは、満足のいくものでした。そのままダブルアクションばかり買い足して計6本。現在に至ります。
さまざまなダブルアクションを使ってみて不便を感じたのは、
1.サイド塗料カップ方式は直上直付けカップ方式に比べ、洗浄が面倒
2.吸い上げ式は塗料がたくさん入るが、部品点数が増え、不具合が多い
3.吹き始めの塗料で粒の大きいものがまざる
ことです。
部品点数の増加がそのままトラブル増加につながった「吸い上げ式」。
塗料がたくさん入るのが魅力でした。
さて、前述の手の癖の話に戻ります。3の問題は僕の手のせいだったのです。これに気づいたのが実は今年に入ってから。(爆)ダブルアクションの吹き始めは、
A.ボタンを押してエアーを出す
B.そのままボタンを引くとニードルが後退し、塗料が出る
C.エアーで塗料が吹き飛ぶ
です。吹き終わり手順は逆に、
D.ボタンを戻すとニードルが前進し、塗料が止まる
E.ボタンから手を離す
F.エアーが止まる
ニードルがばねの力でアシストされているのが味噌です。常に最前進位置にあるので、塗料が漏れ出すことはありません。D→Eの理由は、最後にエアーでノズル先端の残留塗料を吹き飛ばすことにあります。この操作で常に綺麗なノズルで吹きはじめられる、というわけです。ですが、僕は吹き終わりの手順がEからスタートしていました。当然エアーが止まった後にニードルがばねの力で前進するので、常に塗料が残ります。このせいで次の吹きはじめに半渇きの塗料が粒となって飛んでいたのでした。
努力してもなかなか長年の癖は直りません。ならば、原理的に吹き終わりに塗料が残らないハンドピースを使うのはどうか?と、選んだのがトリガー方式です。トリガー方式は、
A.引き金を少し引くとエアーが出る
B.更に引くと塗料が出る
と、非常に単純です。吹き終わりは
C.引き金を戻すと塗料が止まる
D.更に戻すとエアーが止まる
こちらもダブルアクション同様、ニードル前進がばねの力でアシストされています。必ず塗料がエアーの前に止まるので、原理的に塗料がノズルに残ることはありません。唯一の欠点は高額、という点ですが「エアテックス」というメーカーがこれを解決してくれました。本格ハンドピースを非常に低価格で提供しているメーカーです。トリガータイプで3つのメーカーを比較してみました。
メーカー |
エアテックス |
タミヤ |
GSIクレオス |
型番 |
XP-735 |
HGトリガータイプ |
PS290プロコンBOY
LWA |
ノズル口径:キャップ形状 |
0.35mm:丸 |
0.3mm:丸 |
0.5mm:丸/平交換式 |
カップ容量 |
7cc/15ccサイドカップ交換式 |
5cc直上交換式 |
15cc直上交換式 |
グリップ |
あり |
あり |
なし |
価格(税込み) |
13,125円 |
16,500円 |
16,275円 |
GSIクレオスのメタリック塗料に強い大口径ノズルと、楕円形吹き付け用のキャップは非常に魅力的(広い面積があっという間に仕上がるのでカーモデルなんかにぴったり)でしたが、トリガータイプなのにグリップがない、というのは痛すぎます。
GSIクレオスのPS290
タミヤとエアテックスは似ています。大きな違いはカップ装着法と価格。洗浄のしやすさでは直上カップの方が有利、です。しかし実際に持ってみると、直上カップだとカップが邪魔でノズル付近が見にくいです。トリガータイプはグリップを保持しているため、今までのダブルアクションのように「斜に構える」のは難しいのです。また、引き金のフィーリングはエアテックスのほうがタミヤよりやわらかく、疲れにくそうに思え、価格の差もありエアテックスを選びました。
XP-735セット内容です。これにサポートCD-ROMが付属します。
引き幅はタミヤより2〜3mmほど大きいです。
「遊び」はタミヤ同等。
グリップは幅、奥行き共に3mmずつ位大きいタミヤの方が持ちやすかったです。
調べてみるとXP-735はタミヤのグリップと互換性があります。
グリップストッパーのネジも互換性あります。
どうしても手になじまなかったら、
部品注文で取り寄せて交換するといいかもしれません。
いっそ木で自作する手もあります。ウレタンで塗装すれば
ラッカーシンナーに侵されなくなりますし、ボール盤さえあれば。(笑)
このこともあって、最近のお勧めはエアテックスです。ノズル口径0.3mmダブルアクションで特に低価格(税込み8,085円)のXP-725がいい感じです。
型番 |
XP-725 |
ノズル口径:キャップ形状 |
0.3mm:丸 |
カップ容量 |
7cc直上直付け式 |
直付けカップの底です。
接続部は、タミヤの交換式と比べるのはともかく、通常のものと比べても2倍近い広さを持っています。洗浄のしやすさNo.1ですね。もうメタリック塗料やサーフェサーは怖くありません。後輩2人が買って使っていますが、好評です。指の持久力に自信のある方には、XP-725からニードルアジャスターを省略したMJ-124をお勧めします。(笑)税込み7,035円は最安値でしょう。
ちなみに、ハンドピースをメンテナンスに出すと、いくらかかるか?僕が10年くらい普通に使っていたタミヤの「HGエアブラシ」。
↓
。
3,730円+消費税かかりました。
試し吹き結果用紙付です。
製造元に送っているようで、時期によっては非常に待たされるのが難ですね。
2回メンテナンスに出す価格でXP-725が買えてしまうのか…。(汗)
最後に、模型に携わる仕事に就いて初めてシングルアクションを使ってみました。安いのと簡単さで、どういうものか興味があったのです。しかし、簡単どころかとても難しいハンドピースだということが判りました。
まず吹き始めは、
a.後部ダイヤルを回し、ニードルを後退させる
b.塗料がたれ始めるので間髪いれずボタンを押す
c.エアーで塗料が吹き飛ぶ
と、ここまでですでに複雑な手順を踏んでますが、吹き終わりも大変です。
d.ボタンを離す
e.エアーが止まるので、急いでダイヤルを回し、ニードルを前進させる
f.塗料が止まる
特にeを忘れると大変です。ダブルアクションではボタンを戻すと、ばねの力で自動的にニードルが前進して塗料が止まるので、作業を翌日に回すこともできます(非推奨行為です。笑)が、シングルアクションでうっかりeをしないまま床に就くと次の日、とんでもない光景を目にすることに…。僕は大変な目に遭いました。(悲)必ずノズルに塗料が残ってしまいますし。僕には使いこなせませんね。これからエアブラシを始める方は少なくともダブルアクション、できればトリガーアクションを選ぶようにすると、余計なことに労力を取られず上達が早いと思います。
ハンドピースは構造が簡単、価格が安くなるほど人間の努力が必要になると判った、ペルシャたろーでした。05/12/06
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