エアブラシの話その2


 もうすぐ発売になるタミヤのHGエアーブラシUの秘密について。前モデルと比べて何が変わったのでしょう?

 メーカーの静岡ホビーショーパンフレットによると、

1.ファインチューンにより、吹き付け精度がアップ
2.空気流量がアップ
3.手になじみやすい新形状のバランサー


 ということでした。


実際にホビーショーで見たものがこちらです。


確かに「細い」吹き幅になっています。

 このハンドピースを説明するには、「HGエアーブラシ」と「HGファインエアーブラシ」の秘密から説明しなければなりません。



HGエアーブラシ

HGファインエアーブラシ

 それぞれ0.3mmノズル口径、0.2mmノズル口径とありますが、実はこの口径は表記どおりではないのです。

モデル カタログ表記ノズル口径 実際ノズル口径
HGファインエアーブラシ 0.2mm 0.26mm
HGエアーブラシ 0.3mm 0.28mm
HGエアーブラシワイドトリガータイプ 0.5mm 0.5mm

 HGエアーブラシとHGファインエアーブラシの差は、ほとんどないことがわかると思います。HGファインが文字通り細く吹けるのは、先がすぼまった形状をしているニードルカバーのおかげといっても過言ではありません。では、Uの「ファインチューン」とは何か?

 これはHGエアーブラシにHGファインエアーブラシのノズル、ニードル、ニードルカバーを採用して実現したのです。細く吹けて当然ですね。(笑)

 「バランサー」はニードルアジャスター付きテールキャップのことで、人差し指の付け根に優しい形状に改められています。しかし、ホビーショーで見た実物から「空気流量アップ」が除かれています。これは量産モデルを調べたところ、わずかにバラつきがあり、ものによっては「体感できない」範囲ということで表記を止めたそうです。

 今回のモデルチェンジ、担当者の本音は「パッケージを変えたかったから」だそうですが。


あまり変わりないような…。(汗)

 裏技でも書きましたが、タミヤの0.2と0.3は互換性があるので、部品請求で交換、改造は可能です。自分好みにするのも楽しいでしょう。

 余談ですが、タミヤのハンドピースは長野県のビービーリッチで生産されており、1本1本ニードル、ノズルのセンターを測って、更に墨を吹いてテストした後出荷するので、精度については絶対の自信がある、とのことでした。タミヤの価格は海外生産の低価格モデルに比べて確かに高いですが、手間賃というか、安心料としてみるとどうでしょうか?僕の経験では海外生産低価格モデルも普通の使い方なら、さほど悪くないと思いますが。(笑)


 さて、タミヤのパンフレットの図を見て疑問に思ったことはないでしょうか?

 図の中のHG、HGトリガー、HGシングルのノズル口径、ニードル、ニードルカバーはまったく同じです。にもかかわらず、霧の広がりが違います。これはニードルを後退できる幅が違うからなのです。HGシングルはかなり後退させられますが、吹きはじめと事後処理を考えると恐ろしくなります。(笑)


 上記で紹介したHGエアーブラシUは「ダブルアクションタイプ」ですが、ダブルアクションでの現在僕の一押しは、エアテックスの「エポリューションA」です。

 

 ドイツ製で、最初からノズル口径変更を視野に入れて設計されているのです。それも通常のハンドピースと違い、工具要らず。カップサイズも交換できます。こういったカップ変更タイプは接続口が狭くなってしまうものですが、エポリューションAは例外です。とても掃除しやすいと思います。

 更に、ノズルキャップ(タミヤではニードルキャップと称する)がすごいです。


穴が開いているのが判りますか?

 長時間吹き続けたり対象に接近させると、乱気流が発生し、ノズルキャップに塗料が溜まり始めます。そして突然ポタリと!…エアブラシを良く使っていると何度か経験していることと思います。ところが、エポリューションAの整流ノズルキャップはポタリ落ちが発生しません。とかく失敗が許されない局面でも安心の設計がなされているのです。

 これだけではありません。僕が特に気に入っている点は感触なのです。ボディに触った瞬間、手に吸い付くようなのです。初めて他人に触れさせたくない、と思いました。(←販売店担当者にあるまじき発言。笑)

 ダブルアクションレバーも気持ちよい感触です。非常に滑らかな動作で、通常のハンドピースの「Oリングを押している感触」「ばねがきしむ感触」がまったくないのです。ヌルっというか…、他にない感触ですね。さすがフォッケウルフを作った精密工業国ドイツ製、のためかどうか判りませんが、これは機会があったらぜひ触ってみて欲しいです。触ったが最後、購入したい衝動に襲われること必定。価格も性能に対して妥当、というか安すぎるかと。デフォルトの0.4mmノズル口径も、メタリックが詰まりにくくてよい選択だと思います。


 ところで、トリガータイプ派に転向した僕ですが、トリガーの優位性は前回で説明したとおり、まったくゆるぎないものといえます。購入をためらう方の中には、繊細な指の動作がしにくいから、という理由を挙げられるのではないでしょうか?

 たしかにダブルアクションからの乗り換えした方は、なかなか慣れずに往生する場合もあると思います。しかし、現在では画期的なハンドピースが発売されています。それがエアテックスの「ハンザ381」です。これもドイツ製です。

 何が画期的かというと、上付きトリガーアクションなのです。見た感じダブルアクションそっくりですが、レバーを「押す」動作がなく、少し引くとエアーのみ、更に引くと塗料が出て、しかもエアーと塗料の割合は常に最適、というトリガーアクションとまったく同じ動作をします。


エポリューションAと同じ整流ノズルキャップを装備。
塗料のポタリ落ちがありません。
また、エポリューションAと同様、ノズル口径も換えられます。

 これならダブルアクションからの乗換えでも違和感なく、トリガーのすばらしさを味わえるでしょう。残念なのは、構造が違うせいかエポリューションAのレバーで感じる快感がないことです。普通のハンドピース同様の感触です。

 カタログではカップが「固定式」とありますが、僕の手元にあるのはカップ交換式です。


このようにカップが外れる。
中はエポリューションA同様、球状で広く洗い易い。

 ねじのピッチを見ると、エポリューションAと同じです。実際に交換可能でした。ということは、エポリューションAのオプションカップ2、5、15、50ccが使えることになります。カタログが間違っているのか?と、エアテックスにたずねてみました。

 実はもともと製造元のドイツ、ハンザは381をカタログどおり固定式で製造していたそうです。しかしハーダー&ステンベック社に吸収合併されてから、交換式として製造されるようになったのです。それゆえ現在、日本の代理店エアテックスに入荷するものは交換式のみで、固定式は市場在庫のみだそうです。見つけたら買っておくとよいかもしれません。(笑)

 ちなみに本国ドイツでは、銀色のクロムメッキバージョンも販売しています。価格を調べてみると99ユーロ。エアテックスはかなり良心的な価格で販売していると思いました。エアテックスが黒バージョンのみを取り扱っているのは、他がすべてクロムメッキだったので、変化が欲しかったからなのだそうです。黒だとエポリューションAのカップと交換すると違和感が。(苦)


 エアブラシでハンドピースと並んで重要なのはコンプレッサーです。実際に選ぶ段になると迷う方も多いでしょう。人気があるのは以下のタイプだと思います。カタログスペックを抜粋してみました。

メーカー モデル名 定格/最高圧力 毎分吐出空気量 作動音 税込価格
GSIクレオス PS351
Mr.リニアコンプレッサープチコン
0.05/0.085MPa 3L 45dB 13,650円
PS251
Mr.リニアコンプレッサーL5
0.1/0.12MPa 5.27L 50dB 26,250円
PS252
Mr.リニアコンプレッサーL10
0.1/0.15MPa 10L 55dB 41,790円
タミヤ 20
ベーシックコンプレッサー
0.05/0.11MPa 20L 68dB 11,340円
15
コンプレッサーレボ
0.08/0.11MPa 20L 56dB 20,790円
エアテックス APC-001R 0.35/0.38MPa 21L 47dB 18,795円
APC-002 0.4/0.5MPa 21L 47dB 31,290円
ウェーブ 517 -/0.55MPa 17L 35dB 109,200円

 この中で1番当てにできない数値は、作動音です。僕の趣味の1つであるオーディオ。スピーカーでも昔から当てにならないものと相場が決まっています。それは各社で測定方法が統一されていないからです。それでもカタログスペックで60dBを超えたら深夜の使用は難しいと思います。

 圧力と吐出空気量の関係は誤解されやすい項目です。

■圧力=塗料の粘度(顔料の重さ)に関わる
■吐出空気量=ハンドピースの口径に関わる


 と考えるとよいでしょう。メタリックなどの重い塗料を吹くには圧力が、大口径ノズルハンドピースを使用するには空気量が必要になるのです。ちなみにメタリックを美しく吹くには圧力0.1MPa、0.6mm口径ノズルを越えると空気量毎分30Lは欲しいところです。

 自分に合ったコンプレッサーを選ぶには、用途を考えましょう。

1.作業時間帯
2.塗装面積
3.塗料の種類
4.ハンドピースの口径

 コストパフォーマンスで見るとエアテックスのAPC-001Rがダントツです。実際の作動音はL10よりやや大きいくらいですが、圧力スイッチ装備でエアーを噴射するまで作動しません。圧力、吐出空気量も強力で充分すぎる上、6mm厚Sねじスパイラルホースに圧力計付き水抜きを標準装備。付属品は単体で結構しますから、コンプレッサー自体はただみたいなものです。(笑)欠点は強力すぎる圧縮と水抜きが直付けのため、ハンドピースへ行くホース内で結露しやすいことと、0.1MPa以下の使用を続けると圧力スイッチが頻繁に入り切りしてカチカチ音がするということです。

 結露は湿度の高い夏場で見られます。もう1段水抜きをかませるか、直付けの圧力計付き水抜きを外し別売りホースを介して、コンプレッサーから遠ざける方法で回避できます。圧力スイッチのカチカチ問題が気になる方は、エア貯蔵タンク装備のAPC-002を選ぶとよいでしょう。いったんタンクに貯めたエアを使用するので、脈動も緩和されます。

 ただ僕は以前、合計3mくらいのホースで圧力計付き水抜きを介してアドコン4004を使用していたのですが、あからさまに脈動を感じたことはありません。低圧の連続細吹きを多用する方以外は、あまり気にしなくてもよいのでは。

 次点はタミヤのコンプレッサーレボだと思います。作動音はL5よりやや大きいです。通常のハンドピースとグリップ付きハンドピース両方のハンガーとSねじホース標準装備です。圧力は0.11MPaなので水抜きが省略できるレベルです。欠点は外装が樹脂で安っぽいことくらいですか。(笑)

 個人的には、もっと評価されていいコンプレッサーだと思います。なぜならコンパクトボディーなのに圧力は実用レベルで、吐出空気量については大型モデル並にあり、0.5mm口径のハンドピースに余裕で対応します。0.5mmといえばL5でぎりぎり使えるかどうかのレベル。負けているのは作動音くらいですが、実は簡単な対策により、その問題も克服できるのです。別に収納する遮音箱を用意する必要はありません。

 コンプレッサーレボの作動音は、高音と低音から成っています。作動させた状態で持ち上げ、天面と底面を両手で押さえてみてください。どうですか、高音がなくなりませんでしたか?高音の原因は底面の振動にあるのです。この状態でL5とほぼ同じ作動音になります。

 では、実際の対策に移りましょう。


緑で囲った部分が、振動で高音を発生しているところです。

 以下の3つの方法があります。

1.コンセントを抜き、ドライバーでそっと分解し、底面内側に「レジェトレックス」などの防振遮音材を貼り、元に戻して終了
2.「レジェトレックス」などの防振遮音材を底面にそのまま貼る
3.以下のピンクの部分に脚を増設し、天面に500g程度の重石を載せる


ピンクの丸の部分に通常と同じ高さの脚を増設する。

 見栄えがよいのは1です。下部は電源ユニットしか入っていないので、充分に貼れる空間があります。安っぽい樹脂のおかげで対策が容易というのは、面白いですね。とにかく底面の振動を何らかの方法で止めるというのが、肝心。天面は持ち手のモールド、側面は内部モールドにより振動が押さえ込まれているので対策の必要はありません。

 タミヤの担当者は僕と同じオーディオマニアなのに、この対策に気が付かなかったそうで、アイディアを話したらとても驚いていました。ひょっとすると次のモデルに生かされるかもしれません。(笑)


 東より西がお得?というお話。この話はどの模型誌でも触れられていないので、ここで書こうと思います。オーディオ界では常識なのですが、同じアンプを買った場合、東日本よりも西日本のほうがいい音で聴けるのです。そう、これは電源の周波数によるものです。東日本が50Hz、西日本が60Hzなので、東日本から西日本にアンプを持っていくと電源が強化されたのと等価な効果を得られるのです。その境目は静岡県の富士川と新潟県の糸魚川を結んだ線であり、自分が住んでいる地域の電源周波数を知りたいときは、日本の商用電源周波数のページで調べてください。
 
 電源周波数の問題はコンプレッサーにも適応されます。本当にリニアな特性であるなら、東日本より西日本のほうが1.2倍強力になるはずです。僕が使っているウェーブ517ですが、モデル名称は圧力5気圧、吐出空気量17Lから取られています。これは50Hzでの場合で、僕の住む地域60Hzではウェーブ620になります。カタログスペックでは両周波数表記がされており、実際圧力調整機を開放すると6気圧を指しました。

 このように東日本から西日本へ移ると圧力、吐出空気量はそれぞれ1.2倍、消費電力は1/1.2倍とお得になるのです。反面、回転数が上がるので作動音は増します。ノイズはランダムなので1.2倍にならないのが救いでしょうか?寿命も縮む可能性がありますが、微々たる物でしょう。(笑)

 では、とカタログスペックが1つしか表記がない場合、どちらの周波数での性能なのか調査してみました。ウェーブは現在PSE問題が解決していないので、除きました。

■GSIクレオスは東京なので50Hzで表記
■タミヤはSW-653が両表記、レボはインバータが入っているので変わらず
■エアテックスは大阪なので60Hz表記


 これを参考に自分の使う環境でどのくらいの性能が出るのか、見てみると面白いと思います。非力なプチコンなど、西日本だと結構使えるコンプレッサーに化けますね。余談ですが、タミヤのレボは90〜120Vと幅広い電圧に対応しているので、ステップアップ/ダウンコンバータがあれば、回転数をいじることができるそうです。


 この記事を書くに当たって、主要メーカー「タミヤ」「GSIクレオス」「エアテックス」に確認の電話してみたのですが、本当にエアブラシに詳しい担当者が存在するメーカーは、タミヤだけでしたね。ちょっと突っ込んだ話になるとエアテックスは曖昧になり、GSIクレオスはぐだぐだになりました。がんばっていただきたいところです。

Text:ペルシャたろー
06/06/25


     

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