艦船模型


1/350宇宙戦艦ヤマト

「設定重視」ペルシャたろー

 とあるコンテスト用に製作したものです。実は1度賞をいただいたので、気を抜いて「いったい誰がこんなもの知ってるんだ?」というような旧キットを楽しんで作るつもりでした。しかし、目を疑うような告知が!


なんですか、スーパーマイスターって…。

バンダイはいったいマイスターに何をさせたいのでしょうか?
「マイスターのスキル披露によるプロショップ店舗並びマイスターの認知向上」という開催目的なら、
今までの部門だけでよかったのじゃ…。
スーパーマイスターは、バンダイへの静かな怒りでめざめるんでしょうか…。

とりあえず、今年からPG部門はなくなったので、僕は最初で最後のPG部門受賞者になったようです。(笑)

 ガンダムは作りたくありませんでした。それでバンダイでありながらさほど古くなく、僕が情熱を込められるもの。そしてバンダイが売りたくても無念に終わったシリーズであれば尚良し、ということで決定しました。

 今回はコンテスト期間が延長されており、締め切り(3月31日)まで3ヶ月半。12〜1月中旬は例年通り仕事で身動きできませんので、1月下旬から本格着工、前回の経験とキットの素性がよさそうなので、2月一杯で工作終了、3月頭で塗装という予定でした。しかし、僕の油断でやはり苦しい製作となりました。告知があってから作る、というのを止めればいいのでしょうが、すでに完成してるものを提出するのはなんとなくズルしてるようで、好きになれないのです。困った性分です。


 僕は宮武一貴氏のPS版ヤマト(Ver.98)が(というより宮武デザインすべてが)大好きで、プラモデルが欲しいな、と思っていました。特にバルバスバウ(球状艦首)は直前の「青の6号」の影響もあってかとても印象的です。電撃ホビーマガジン掲載の真鍋正一さんの1/700キット改造作品を見てとてもうらやましく思いました。その後一部模型関連ホームページでもPS版を元にしたと思われる作品を目にするようになります。特に道楽おやぢさんのフルスクラッチ作品が評判の様子。

 そして2006年春、バンダイが久しぶりにヤマトを。それも1/350でキット化するというニュースが。噂では、道楽おやぢさんの作品が商品化に影響を与えたみたいですが…。5月の静岡ホビーショーで展示するとの事なので、行って見ました。

 

5月19日、ツインメッセ静岡。


1/350の試作が2隻、1/500コズミックが1隻飾られています。
彩色済みの試作は、艦体がTV版でアンテナを含む構造物がPS版、
下地むき出しの試作は、艦体がバンダイプラモ版でアンテナを含む構造物がTV版に見えます。


特に艦首は、
アニメ設定でも宮武一貴氏のPS版ヤマト(Ver.98)でもない姿に、
がっかり。

せっかく今回は艦体中央の丸みを再現しているのに、
艦首を太くすると良さを殺してしまいます。

僕がTV版でもっとも艦体を再現していると思っているのは、野村トーイ1/1250キットです。
せめてTV版なら、その姿を1/350に入れられないのだろうか。

部品分割も謎です。ポピニカ魂もそうでしたが、この分割だと波動砲口とバルバスバウの
ラインに分割線が出て美しくありません。

その場にいたバンダイの岸山さんに意見具申してみました。
艦首の分割も含め、いろいろと考えてはいるとのこと。
違うアレンジの2隻を並べたのは、
お客さんからさまざまな意見を取り入れるため。
個人的に艦首から見た迫力が欲しい、
と仰っていました。


なるほどこちらは正面から見ると
「ヤマトよ永遠に」ポスターっぽく見えます。

しかしあれは広角レンズで見た効果で描かれているのであって、
商品としてプレーン(デフォルメのない)なものを販売して、
広角レンズで楽しめばいいんじゃないか、と最後まで疑問に思いました。


せめてこちらのPS版構造物が生きてくれ、と願います。

2007年1月27日。
実際に発売になったのは、不満はあるものの、
PS版のディティールがかなり残り、艦首も試作よりスマートな姿の
うれしい商品となりました。
もちろん発売日に購入しましたよ。
でもいつか、という事で物置で眠りについたのでした。(笑)


 今回はザクと違って改造するポイントは限られています。工法はプラ板とエポキシパテに決定。パーツを洗浄中にPS版ヤマト(Ver.98)の設定書を良く見て、頭の中でぐるぐると立体をまわし各種模型雑誌の作例を見て、キットとの差を見極めます。

 とりあえず艦首喫水のえぐれがキットでは再現されてないので、ここだけはこだわろうと思いました。

 最初に着工したのは船台で、ゲート処理と塗装をしました。 これだけで20cmクラスのロボットプラモ同等の労力に感じました。組み立ては後に回します。…しかしこれが間違いだと後で判るのでした。


2009年1月26日、
内部メカの制約で艦体が四角くなっている部分を修正。


きゅっと腰を絞った女性的なライン。


内部メカのせいでライン再現が難しくなってしまっているようなので、
迷わずメカケースを分解してみました。

何と、薄い基盤1枚だけです。
ケースがフレームを兼ねているためか、はたまた試作基盤が大きかったのか。
おかげでケースを切り取って喫水を絞る事が容易になりました。


1月29日、
大気圏内安定翼閉鎖。


艦体を接着。
分割に疑問を感じます。
ここまでを一発で抜いたほうがユーザーに優しかったのではないでしょうか?


お腹のふくらみを増すため、1mm角棒を接着。
これをガイドにエポキシパテでラインを整えます。


おそらくシャッターを下げるために生じたギャップ。
キットのままだとここで艦体ラインが窪むのです。


エポキシパテで整形。
キットは左右対称でない事が判ります。
金型段階では対称でも、抜いた後の収縮で歪みが出るのでしょうね。
これだけ大きいなら仕方ないかもしれません。
僕のキットは艦首で特に顕著でした。


作っている最中、突然TVCMでヤマトが。どうやらパチンコのCMらしいです。
偶然ですが、僕の作品に追い風が吹いてきた気が。


気付いてしまった。
このキットは艦首がデフォルメされている。

イメージモデルほどではないですが、有名な「さらば宇宙戦艦ヤマトのポスター」に使われた
前方パース絵をイメージに盛り込んだ設計がなされているのです。

 前出のホビーショーで岸山さんが「艦首の迫力を出したい」としきりに仰っていたのを思い出します。このキットは「中心」の部分が広角レンズで見たようにふくらみ、フェアリーダー後部「55mm」のところから前方へ急に立ち上がっているのです。フェアリーダー前方にも2mmのギャップが出ています。これを消さなければ。

綺麗に整形できていた艦首をのこぎりで分解。


前部甲板も中央で2.5mm幅詰め。


何かキットを使うよりプラ板で一から作ったほうが早い気がしてきました。


お腹周りは順調に進んでいます。


つぎはぎで何とか形にしました。
ロケットアンカー口の位置を前方へ移動するべく、切り取っています。


う〜ん、何か違う。

そうだ、バルバスバウが球状じゃない。


ガイドに円形に切ったプラ板を貼り、
エポキシパテを盛ります。


放置していた船台を組み立てるときがきました。

あっ!
成型不良。

なんということだ。
組み立て前のチェックと言う基本を忘れていた自分に腹が立ちます。
バンダイに限って、と油断していたのかもしれません。

バンダイのサポートページを見ると
「2007年2月27日をもちまして注文の受付を終了」の旨が。
ダメ元で「困っている」と言う連絡を取ります。


落ち込んでもしょうがないので、
次の工程へ。
砲塔ギヤボックスの確認。



バルバスバウとのバランス確認。
喫水下がウインナーっぽく見えてきたり。(笑)


中心」にあったふくらみを取り去りました。


このライン、何かに似ている。

そうだ!
F-4ファントムの機首のラインそっくり。



僕がPS版に魅力を感じたのは、
ジェット戦闘機で1番好きなファントムのラインが隠れていたからなのかもしれません。
PS版ヤマト自作にF-4ファントムのキット使えそうです。



バンダイの好意により、翌日には代わりの船台パーツが届きました。
ありがたいですなー。


仮組みしてバランス確認。


スピーカーがビビリ音を出さないよう、
鉛テープで防振対策。長岡派としては見逃せない。(笑)


アルミテープで配線がからまないよう、まとめます。


ロケットアンカー口、移設完了。


アクシデント。
部屋のドアにぶつけて、メカケースのジョイントを破損してしまいました。
エバーグリーンのパイプで補修。



波動砲口はキットの物では使えないと思っていたので、
最初から自作する予定でしたが、思った以上に難物でした。
まず、プラ板が上手く丸められません。
僕のスキルが足りないのです。
何度も失敗。

最終的に厚紙で型を作り、0.3mmプラ板でポリゴンバレルを形成。
結果的にライフリングが並べやすくなったので良かったです。


フェアリーダーのダクトを5個から4個へ。
この部分は僕の持っている資料で常に4個なのですが、
なぜバンダイは5個にアレンジしたのでしょう?
道楽おやぢさんは5個で作っておられますね…。

さて、艦首を張り合わせようという時、

いまさら、気付いてしまった。

キットの魚雷発射管の形状が前と後でデザインが違います。大きさも然り。
前方はギミックのためか、つるりとしてTV版に近い印象で、
後方はPS版のディティールで凹凸が逆に成型されています。

さすがバンダイさん、僕にはこのようなアレンジは思いつきません。

12個ある発射管はとてもじゃないですが、同じ精度で作れませんので、
1つ原型を作ってレジンキャストコピーする事にします。

こうしてみるとこのキットは艦首がTV版、以降がPS版というキメラキットに思えてきました。
いろんな人の意見を取り入れるのは大切ですものね。


甲板の違いもいまさら気付いたところ。
1.2mmプラ板にエバーグリーンの細切りを貼り付けて再現。
しかし、キットのモールドと違和感が…。


艦橋への配線を分岐させ、
第3艦橋へ導く。しかし、どうにもスマートではなく。
もう1度仕切りなおしますか。

このヤマトで使われているコネクタは
精密ドライバーのマイナスで
簡単に外すことが出来ます。


艦底のインテークは開口して彫りを深くしました。
キットの彫りがほとんど無いのは…、


やはり裏側のモールドが影響しているのでしょうか?
同じ角度でも第3艦橋のは抜けてるもんなぁ。


結局、甲板の細切りの幅を変えてやり直し。



モデルグラフィックスで紹介されたように、
砲身先端はヤスリでエッジを出します。
キットのままでは厳しい出来です。

ホビーショーの看板にあった「砲口のライフリングを再現」は
どこへいってしまったのでしょう?


新造した艦橋への配線。
合計200円くらいのパーツですが、
あいにく僕の住んでいる県に
広角白LEDとソケットがなかったため、
秋月電子と千石通商へ通販利用。
送料のため、合計2,500円ほどに!(数もたくさん。泣)

はんだ付けは好きなので、工程は楽しかったです。


2時間でライフリングを入れた波動砲口と、魚雷発射管の原型。
ライフリングはエバーグリーンのおかげで凄く助かりました。
0.75mm厚を使用しました。
設定書前方パースでは上4本、下1本、左右13本ずつの計31本ですが、
この形のままで設定書通りは無理なことが判りました。
もっと砲口を正六角形に近づける必要がありますね。
この形のままプラ板を薄くすると、上の4本だけ空いてしまいますから。
いい勉強になりました。

波動砲口はメタルカラー212アイアンで塗装するつもりです。
波動砲口もキャストコピーするつもりでしたが、
型と原型どちかかが喰われてしまう恐れが強く、断念しました。

魚雷発射管の型は最初1つだったのですが、効率が悪く、最終的に3つ作りました。


甲板を再度はがし、やり直し。
どうしてもキットと違和感があり、許せなかったのです。
結局原始的な手法で仕上げました。



艦橋の塗りわけのため、マスキング。
床は7茶色にしました。


第2艦橋のスクリーンは
アルミテープでも良かったかも。


波動エンジンへ向かう配線ですが、
これも補助エンジン側をいったん外して
先に接着しておいたほうがよかったと思います。


ライフリングは我ながら上手く出来たと思ってます。
キットの透明シャッターはスモークグレーで塗りました。


艦載機格納庫。
後から気付きましたが、
PS版は色が少し違うんですね。
僕は「さらば」の色で塗ってしまいました。


3月24日、
間に合うのか?


リューターで穴を開け、ようやく魚雷発射管装着。
レジンキャストが透けるので、裏から黒で塗りました。
後部魚雷発射管のモールドが凹凸逆に成型されていたのは、
裏側の補強リブの関係かもしれません。


バルバスバウにある小判型のディティールは、
ファインモールドのAB-02Cの3.5ゲージが合います。
キットは後部が凸、前部が凹と逆の表現になっているのが
魚雷発射管同様、新鮮です。


PS版のアイテムは原型途中。これは今回あきらめです。


第3砲塔の周り、ラインがえぐれていたのでエポキシパテで修正。
切羽詰ったときに6時間待つのは辛いです。
かといってもうドライブースに入らないし、
新製品のGSIクレオスエポパはまだ実験してませんし。


そんなこんなで何とかキットのアンテナを使って完成しました。

 色はゲーム画面と宮武氏はおそらく「鉄の塊」を意識して描いているだろうとの事で、濃く調合しました。最初上部グレー部分はガンメタルにしようか(MAX渡辺氏の野村トーイヤマトのように)とも思ったのですが、このスケールであっても銀粒子が粗いと思ったので、ガンメタルに見えるグレーを目指しました。艦底はGX3ハーマンレッドをベースに29艦底色で作りました。


 
バンダイの雑誌広告とほぼ同じ角度から。

 
艦橋側面ディティールを見落としていてあわてて掘り込みました。

 
設定書風。
斜め前方パースは、僕の持っているレンズ18-125(35mm換算27-187.5)の限界で
これ以上寄れませんでした。もっと広角レンズと更にバックの紙面積を増やす必要ありますね。
紙を広げる場所は確保できるのだろうか?


魚雷発射口、大気圏内安定翼以外のギミックを残しています。
キットでは透明パーツになっている波動砲発射口ですが、
アイアン風メッキにするとよかったと思います。
各種模型雑誌で光の漏れに苦労していましたからね。


デスラー艦を誘うポーズ。(笑)

 今回の気付き点。

1.油断しすぎ。
 キット改造と言うのは、

 目標を決める→現実を見る(仮組みしてギャップを確認)→工法を決める→工作・検証

 で成り立っているのですが、僕はバンダイの最近のキットの出来が良すぎる(仮組みする必要がないくらい精度が高い)ため、現実を見なかったのです。物が大きすぎたためもあるのですが、仮組みせず雑誌の作例でキットを判ったつもりになり、スタートしてしまいました。おかげで工期が伸びました。

2.ペトロールは止めよう。
 墨入れの希釈にホルベインのぺトロールを使用してますが、このバンダイのグレープラスチックを侵すようです。調合したラッカー塗料も溶けやすかったです。可動部もほとんどないので、タミヤエナメルシンナーを使うほうが綺麗にふき取れていいと思います。

3.ポリパテで型を取るのは止めよう。
 魚雷発射管の原型を作るため、後部魚雷発射管にポリパテ(ワークのモリモリ)を押し付けたのです。ところが!プラスチックが予想外に侵され、梨地を通り越して気泡まで出来る始末。メンソレータムで離型処理していたのですが、リカバリーにとても苦労しました。いつまで経ってもスチレンモノマーの臭いが。時間短縮のためにポリパテを使用しましたが、事後処理の時間を考えると、エポキシパテで行うべきでした。反面、ポリパテは削りやすくて原型は順調に仕上がりました。

4.エポキシパテをメンソレータムで柔らかくするのを止めよう。
 僕は今まで、アーマーモデリングの記事でエポキシパテを練るとき、メンソレータムを使用していましたが、ヤスリがけの際プラとの境界面が荒れやすくなります。結合力も今ひとつで、追加盛り付けにも定評のあるウェーブ軽量エポキシパテでも容易に剥がれるようになります。そこで作業後半は原点に立ち返り、「わずかな中性洗剤を入れた水」を使うことにしました。これは指にべとつかず、密着力も申し分ありません。今後もこの方法でいきたいと思います。

5.基本ができてない。
 僕は苦手な工程があります。仕上げと小さな部品の平面だしです。ヤマトは半艶で仕上げるつもり(船の科学館の模型のようにしたかった)が一部まだらな具合になりました。部品の平面だしは今回、主砲のセンサーやカタパルトの合わせ目で苦労しました。上手い人がうらやましいです。技、盗みたいです。

僕の中でこのヤマトは終わっていません。間に合わなかったPSパーツと順に入れ替えていきたいと思います。
とりあえず暫定完成。

 09/04/08

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